4.Puritan Bennett
840
1.特徴(図III-4-1)
Bennett 7200は革新的な機構と優れた患者回路設計でいまだにトップレベルの人工呼吸器であるが、1984年の発売以来すでに15年が経過し、ユーザーインターフェースにやや古さが目立つようになってきた。途中、M&A(企業買収)の嵐に巻き込まれて(Puritan Bennett社は1997年にNellcor社に買収されてNellcor Puritan Bennettとなったが、1998年にはさらに Mallinckrodt社に買収されて、Mallinckrodt社の1ブランドとなった)開発が遅れたと聞くが、1998年になりBennett 840がようやく発売された。新生児(3.5Kg)から成人まで対応できServo 300の強力なライバル商品に成長した。特に圧換気モードは改良が加えられていて、BIPAPのように呼気弁も吸気圧調節に積極的に関与するのでオーバーシュートが少なく、安定した圧維持を可能にしている。PCV, PSVのFlow Acceleration %やPSVのExpiratory Sensitivity %(吸気終了認識流量)もユーザー設定することができる。弱点であった、ディスプレー能力や操作性はDualView Touch Screens Displayによって、解りやすい表示と操作になった。呼気弁制御能力もアクティブ制御によって大幅に改善された。オプションとしてコンプレッサー、バックアップ電源が用意されている。オプションモードとしてBi-LevelやPAVも準備中と聞いている。
2.性能
1)利用できるモード
A/C (PCV or VCV)
SIMV(PCV or VCV) + PSV
SPONT(PSV, CPAP)
---------------------------------
+PEEP
Flow trigger
Apnea Backup
2)基本データー
システム作動間隔時間...? ms
最大吸気ガス流量
強制換気............150LPM
PSV.....................200LPM
吸気ガススルーレート... ? L/s2
最大強制換気数......... 100 BPM
最大SIMV回数...........100 BPM
バッテリー駆動時間...内蔵バッテリー;0.5時間以上
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説
MPUにはモトローラ68040を使用している。ブレスデリバリーユニット(BDU)と、グラフィックユーザーインターフェース(GUI)に使用されている。2つのMPUは相互に作動状況を監視している。
2)機械的機構の特徴
患者回路はBennett流のシンプルな2本チューブで、呼気弁やフローセンサーは加温フィルターにより保護されている。
3)ガス流量計測
呼気ガス流量、吸気ガス流量はホットフィルム型センサーで計測される。
4)吸気バルブ
PSOLと呼ばれる流量制御弁を酸素とエアーにそれぞれ装備する。酸素濃度の調節と吸気ガス流量の調節を一期的に行う。
5)呼気バルブ
7200ではメカニカル制御であったが、840ではサーボ制御方式に改良された。呼気ガスの流量の変化に影響されないようにPEEP圧を積極的に維持する。これをアクティブ呼気弁と呼んでいる。圧換気時には、吸気相でも(EvitaのBIPAPのように)吸気圧のオーバーシュートを逃がすように作動する。
4.ニューマティック回路(図III-4-2)
酸素、エアー配管より入力されたガスは、それぞれ、フィルター(F1,F3)(F2,F5)、逆止弁(CV2)(CV4)、レギュレーター(REG1)(REG2)で減圧される。これらのガスは流量制御弁(PSOL1)(PSOL2)で混合比率と流量を調整される。PSOL1,PSOL2を通過するガス流量はフローセンサー(Q1)(Q2)で計測されPSOL1,PSOL2の制御に用いられる。機器異常時に患者回路内圧が異常に上昇した場合は安全弁(SV)が開き回路を解放する。気道内圧のセンサーは吸気側(P2)と呼気側(P3)が設けられている。電磁弁(SOL1)(SOL2)は圧センサーのゼロ点校正用である。呼気ガスは、加温フィルターを通過したあと、圧センサー(P3)、逆流防止弁(CV5)、フローセンサー(Q3)を経てアクティブ呼気弁で通過量を調整される。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
圧トリガー方式、フロートリガー方式を選択できる。圧感度1pH2O、フロー感度1 LPM(小児)、1.5 LPM(成人)より敏感に設定した場合にオートサイクルを起こさないように、フィルタリングアルゴリズムが組み込まれる。
a)フロートリガー
フロートリガーを選択するとトリガー感度+1.5 LPMのベースフローが自動的に付加される。また、バックアップとして-2pH2Oの圧トリガーが併用される。フロー感度は0.5-20 LPMの範囲で設定できる。初期値は3 LPM(>24Kg IBW)、2 LPM(<24Kg IBW)である。呼気弁の性能が改善されたので、Flow byにはなっていない。
b)圧トリガー
圧トリガー選択時には 1 LPMのベースフロー(圧トリガーではバイアスフローと呼び方が変わる)が付加される。圧感度は-0.1-20pH2Oの範囲で設定できる。初期値は-2pH2Oである。
2)A/C
補助もしくは強制換気モードをA/Cと呼ぶ。圧換気もしくは量換気を選択できる(一般的に、前者はPCVと呼ばれ、後者はVCVもしくはsCMVと呼ばれる)。圧換気では呼気弁は目標圧で閉じられているので、オーバーシュートした分は(BIPAPと同じように)呼気弁よりリリースされる。量換気ではフローパターンを矩形波、漸減波より選択できる。漸減波の場合は設定流量より低下していく。漸減波の平均流量は矩形波のそれの半分であるので、吸気時間はおよそ2倍になる。吸気プラトーを付加できる。どんな換気であっても、I:E比が4:1以上になる設定、吸気時間が8秒以上もしくは0.2秒以下になる設定、呼気時間が0.2秒以下になる設定は受け付けない。
3)SIMV
トリガーウィンドーは固定時間方式で、SIMVサイクル時間の60%に設定されるが、最大10秒までである。自発呼吸相で始まった自発呼吸が強制換気相が開始しても継続している際には、強制換気は開始せず、極端な場合には、単数もしくは複数の強制換気が省略される。SIMVでは、すぐに無呼吸バックアップに入らないように、1回目の無呼吸時間で強制換気を1回入れ、さらにもう1回無呼吸時間が経過した時点で無呼吸バックアップに入る。これはSIMVサイクル時間が無呼吸時間より長い場合に有効となる。例えば無呼吸時間は15秒を用いることが多いが、この場合、SIMV回数の設定が4 BPM以下の状態を想定していることになる。(図III-4-3)
4)PSVとEsens
吸気終了認識条件にうちフロー条件(terminal flow)はオペレーターが設定できる。つまり、最大吸気ガス流量に対する%値を設定できる(Esensと呼ぶ)。吸気ガス流量がEsens以下になればPSVの吸気相は終了する。これに加えて、目標圧力に対する増加量が基準値を超えた場合でもPSVの吸気相は終了する。基準値は吸気開始より200msまでは直線的に増加する。その後は1.5pH2Oまで直線的に低下する。それ以降1.5pH2Oが用いられる。PSV開始時に基準値が高いのは、オーバーシュートによって誤動作を起こさないための対策である。開始時の基準値と1.5pH2Oまで低下するまでの時間(Tn)の詳細は公表されていない。最大吸気時間は1.99 + 0.02 x IBW秒である。(図III-4-4)
5)立ち上がり流量(Flow Accelaration %)
0-100%の範囲で設定可能である。初期値は50%であるが、何に対する%か不明である。%値を大きく設定すると立ち上がりが早くなるが、オーバーシュートやアンダーシュートを生じやすくなり、圧の振動を生じる。また、ピーク流量も多くなるので、PSVでは結果的に吸気終了フロー条件も多くなり、相対的にPSVが早期に終了する。最低に設定すると吸気時間の2/3で設定圧の95%に達する。
6)IBW(Ideal Body Weight)
人工呼吸器始動時に体重を入力すると、初期値としての、1回換気量、最大ガス流量、送気アルゴリズム、吸気時間延長アラームが確定する。1回換気量は7.25 ml/kgになる。最大ガス流量は80 LPM(IBW<24kg), 200 LPM(IBW>25kg)
7)バッテリー駆動
内蔵バッテリーにより最低30分作動できる。
8)無呼吸バックアップ
あらゆる呼吸モードで有効である。無呼吸バックアップ換気時の、酸素濃度、呼吸回数、一回換気量、吸気ガス流量、換気圧、等を設定することができる。無呼吸バックアップはリセットキーを押すか、患者が2回連続してトリガーし呼気換気量が送気量の50%以上に達した場合に自動的に解除され元のモードに復帰する。SIMVモードでは無呼吸時間が経過したあと強制換気が1回送られ、さらに無呼吸時間が経過した時点でバックアップ換気に入る。
9)Dsens
患者回路のはずれを検出した際にアラームが鳴る。人工呼吸器の送気量と呼気量との差が比較されている。送気量に対する損失量の%値が設定値以上になれば警報する。
10)100%酸素キー
酸素が2分間患者に供給されると同時に、酸素センサーの校正が行われる。
11)マニュアル換気
マニュアル換気キーを押すと強制換気が送気されるが、患者が呼気中に強制換気を送気しないように呼気を検出している。呼気の開始より200ms経過するまで、呼気ガス流量がそのピークの50%以下もしくは0.5 LPM以下になるまで、または50%を依然として超えている場合は5秒を経過するまで、強制換気は送気されない。
12)安全システム
作動中のシステムトラブルを防止するために、電子制御回路とガス回路の両方を継続的にチェックしている。これはバックグランドチェックと呼ばれる。さらにMPUシステムの異常に備えて、ソフトウェアー上だけでなく、ハードウェアー回路を使ってソフトウェアーの作動状況と停電トラブルをモニタしている。これには、Watch Dog Time-out回路、BUS Time Time-out回路、Built-in CPU monitor回路、があり、異常時にはPOST(Power On Self Test)を実行し、システムをリセットし直す。24時間に3回作動すると作動不良のアラーム状態になる。
6.操作方法
操作方法(図III-4-5)
1)基本操作
設定操作は下部スクリーンを使用する。タッチスクリーン方式の操作体系になっている。基本は、項目を「タッチ」で選択し、つまみを回して数値を入力し、「入力キー」で確定する。入力途中では「解除」を押すと変更前の設定値に戻してくれるundo機能が働く。どの画面であっても「設定」をタッチすると設定画面の最初のページにジャンプ(移動)する。
2)始動画面(図III-4-6)
電源を入力すると始動画面が現れる。前回と同じ設定であれば、「同患者」をタッチする。「新患者」を選択した場合には、新患者設定画面(IBW入力画面)になる。「IBW」をタッチし、IBW入力状態にしてノブを回して体重を入力する。次に「継続」をタッチして次画面(設定画面)へ移動する。
3)設定画面(図III-4-7)
モード(A/C, SIMV,自発)、強制換気タイプ(PV, VC)、自発呼吸タイプ(PSV ON, OFF)、トリガータイプ(圧トリガー、フロートリガー)の設定値が現れるので、変更を希望するボタンにタッチし、ノブを回して選択する。「継続」をタッチして次画面に移動すると、その他の項目も表示される。同様にタッチで選択し、ターンで数値入力する。すべての設定が終了したら「確定」をタッチする。最後に「入力キー」を押して設定を終了する。患者に接続をすると正常換気がスタートする。その後、無呼吸バックアップ換気の設定画面が現れるので、必要であれば数値を変更し、「確定」をタッチし、「入力キー」を押す。「入力キー」を押す前であれば随時「再始動」にタッチして始動画面を最初より開始できる。
3)作動中の変更
初期患者設定後でも、変更を希望する項目をタッチして選択し、ノブを回して数値入力し、「入力キー」を押して確定することで変更できる。下画面の上部に表示されている項目は直接タッチ、ターン、入力で変更できる。無呼吸バックアップ換気の設定は、「無呼吸」をタッチし、無呼吸換気設定画面に入り設定する。アラームの設定は、アラームのシンボルマークで表示されている「アラーム設定」をタッチしてアラーム設定画面に入り設定する。その他の項目(加温加湿器のタイプ、酸素センサーのON、Esens、Dsens)を変更するには、他の画面ボタン(これもシンボル表示されている)を押して設定していく。モード変更や1度に複数の項目を変更するには、「設定」をタッチして設定画面に入る。
7.モニター、アラーム機能
1)概略
高優先度、中優先度、低優先度、正常作動の4段階で表現される。異常事態が解除されてもインジケーターはリセットするまで点灯している。上部スクリーンにはアラームメッセージが表示される。アラームメッセージは、ベースメッセージ、分析メッセージ、処置メッセージより成り立つ。アラームの履歴は記録されていて上部スクリーンのアラーム記録ボタンをタッチすると内容を表示できる。
2)アラーム項目
無呼吸時間(初期値20秒)、回路内圧上限(初期値60pH2O)、呼吸回数上限(初期値OFF)、1回換気量上限(初期値8.7 x IBW)、強制1回換気量下限(初期値5.8 x IBW)、分時換気量下限(初期値0.0928 x IBW)、分時換気量上限(初期値0.1392 x IBW)、自発換気量下限(初期値5.8 x IBW)がある。
3)機器作動
電源低下、装置の異常、配管圧低下、処理エラーを警報する。機器異常時には安全弁開放状態になり、患者回路を大気に解放する。
4)患者回路の異常
a)回路の閉塞
送気のすべてのサイクルで患者回路の閉塞がないか絶えずチェックしている。閉塞を検出するとアラームが作動し、経過時間を表示する。吸気圧が5pH2O以下になるまで、もしくは15秒経過するまで、安全弁を解放する。その後一定間隔で吸気時間2秒吸気圧15pH2OのPCVを繰り返す。閉塞状況が解決されると元の作動に復帰する。
b)回路の接続不良
呼気の最初の200ms中にフローや圧を検出しない場合、3回連続の換気でDsensが設定値以上になった場合、PSV時に最大吸気時間内に設定レベルに達しない最大フローを検出した場合、回路のはずれと見なし、アラームが作動し、経過時間を表示する。呼気弁を開き、100%酸素10LPMを供給する。接続不良が解消された際には、元の作動に復帰する。
8.ディスプレー機能(図III-4-8)
設定は下部スクリーンに表示される。患者情報は上部スクリーンに表示される。換気回数、気道内圧、分時換気量などの実測値は上部スクリーンの上側に数値表示される。その下のアラームエリアにはアラームメッセージを表示する。サブスクリーンエリアには圧、フロー、量のうち2波形をグラフィック表示できる。また、圧-換気量曲線も表示できる。キータッチによりアラームの履歴を表示する。
9.患者回路構成、加湿器(図III-4-9)
加湿器はF&Pが標準装備である。
10.メンテナンス
1)呼気弁
呼気弁は本体内に内蔵されており、日常的な使用での分解、洗浄、滅菌の必要はない。呼気弁の前に加温されたバクテリアフィルターがあり、これにより患者回路は汚染しないためである。そのため回路は単純に2本のチューブのみで構成できる。滅菌後の回路の組立ミスも起こり難い。
2)フィルター
15日連続しようした場合、使用開始前、その他抵抗が大きくなっていると予想されるときには抵抗を確認する。吸気フィルターは抵抗が1-4pH2O/60LPMもしくは0.5-2pH2O/30LPMの範囲である事を確認する。呼気フィルターは抵抗が0.6-2.4pH2O/60LPMもしくは0.3-1.2pH2O/30 LPMの範囲にある事を確認する。ネブライザー使用後は、なおさらこの点に留意する。なお、バクテリアフィルターはオートクレイブのみ可能である。毎年もしくは100回滅菌したら交換する。
11.定期点検
1)毎年
サービスエンジニアによる各種トランスデューサーの校正、テストを行う。
2)2年ごと
酸素センサーならび電源バックアップバッテリーを交換する。
3)10,000時間
プリベンティブメンテナンスキットを用いてサービスエンジニアによる各種パーツの交換を行う。
12.欠点
1)これはベネット社の伝統であるが、マニュアルが技術者の視点で記載されていて、一般臨床医には難解である。また、臨床上知りたい情報に関しては企業秘密の壁が高く情報公開がほとんどされていない。逆に、臨床医にとって関心が低い技術的な処理に関しては不必要に詳細で、きわめて読みづらい。例えば立ち上がり流量については、何に対する%か全く解らない。一方、モード変更時の処理など、タイミングについて不必要にくどくど記載がある。
2)操作体系は7200に比べるとかなり改良されたが、予備知識を要求する部分がかなりある。確定キーをタッチしたあと、さらに入力キーを押す事を要求するのは煩雑である。その上、日本語で表示される用語は一般的に受けいられている用語と合致していない。単に漢字に置き換えただけで意味不明である。例えば設定、継続、解除、再始動など、マニュアルを一読しただけでは何を意味するのか理解できない。逆にこれらの訳語からもとの英語を正確に推定できない。まだしも英語表示のままの方がコンピューター用語に近いので概念を推定しやすい。
3)基本性能が充実したのは評価できるが、新しい呼吸モードを提唱していないのは、業界のリーディングカンパニーとしては物足りない。
Bennett 740 (Nellcor Puritan Bennett)
1.特徴(図III-4-11)
Bennett 740は、ピストン駆動方式の人工呼吸器でエアー配管がなくても作動する。フリクションレスピストンと強力な駆動機構によって、強制換気では150LPM、PSVでは300LPM(!)の吸気流量を可能にする。搬送用からICUまで幅広く対応する商品で、T-Bird(Bird社)と同じコンセプトである。内蔵バッテリーにより2.5時間、外部バッテリーも併用すれば9時間作動する。
2.性能
1)利用できるモード
Assist/Control
SIMV + PSV
PSV
---------------------------------
Flow trigger
+PEEP
2)基本データー
システム作動間隔時間...?ms
最大吸気ガス流量
強制換気............150LPM
PSV.....................300LPM
吸気ガススルーレート... L/s2
最大強制換気数......... 70BPM
最大SIMV回数...........70BPM
バッテリー駆動時間...内蔵バッテリー;2.5時間
オプションの外部バッテリー;約9時間
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説(図III-4-12)
従来のピストン駆動方式の人工呼吸器の用途は、ピストンの慣性や摩擦、駆動機構の非力さ、遅いレスポンス故に、麻酔用や在宅用などの高性能を必要としない分野に限定されていた。一方、ガス駆動方式は原理上、迅速なレスポンスと高い最大流量を可能にするが、エアー配管を必要とする制約があった。また、エアー配管にまつわるトラブルもやっかいな問題でった。これらに対する解答として、Bird社よりタービンを使用したT-Birdが登場したが、Bennett社はピストンがシリンダ内壁に一切触れないフリクションレスピストンによって対抗する。社内資料によるとレスポンス時間は換気条件により異なるが、だいたい80〜100msである(bigin pressure drop - back to baseline )。これは900Cや8400STiより有意に短く、優秀といわれているBear 1000やSV300、Evita 2と同等である。また、圧波形も素直なもので、制御系が優れていることが予見できる。
2)機械的機構の特徴
患者回路はBennett流のシンプルな2本チューブで、呼気弁やフローセンサーは加温フィルターにより保護されている。トリガー機構はフロートリガー方式である。
3)ガス流量計測
呼気ガス流量は差圧式のセンサーで計測する。吸気ガス流量はセンサーを持たないが、ピストンの移動量とピストン内圧より演算する。
4)フリクションレスピストン
吸気バルブに相当するのがフリクションレスピストンである。ピストンとシリンダーの間に髪一本分の隙間(50マイクロメーター)があり、絶えずリークが発生する。リーク量とピストン内圧には一定の関係があるので、ピストン内圧を測定すれば、ROMに記録されている既知の量を基にリーク量を推定できる。ピストン制御系はリーク補正するように作動している。
5)呼気バルブ
PEEPポンプにより作られる圧やピストンによって発生する吸気圧を電磁弁で切り替え、バルーン弁を駆動する方式である。患者回路リークなどで、PEEP圧が低下すれば、PEEPを維持するようにピストンは駆動される。しかし、呼気ガスによりPEEP圧が上昇しても積極的に低下させる機構はない。
4.ニューマティック回路(図III-4-13)
O2配管より入力されたガス(35psi以上)は、フィルター、逆止弁、レギュレーターで減圧される。減圧された酸素と外気は、患者の呼気の始まりと共に、150 LPMの速度で吸入される。ピストンの入口には一方向弁が設けてある。Mixing Manifoldでは、吸入動作時に2種類のO2ソレノイドを使い分け、シリンダ内に酸素を噴射する時間を調節して酸素濃度を決定する。呼気相の開始後、遅くても0.8秒(ピストン容積は2 Lなので、2 /150 分 =0.8秒)には吸入行程は終了し、トリガー検出の準備が整う。その後はベースライン圧を維持するようにピストンは排出を始める。トリガーの作動に伴ない、PSVもしくは強制換気が開始し、圧や流量を維持するようにピストン制御系が動作する。ピストン内のガスは、一方向弁、酸素センサーや安全弁(異常高圧時にリリーフする)を経て、患者の吸入ガスとなる。患者よりの呼気ガスは、加温フィルター、呼気弁、呼気ガス流量センサーの経路で排出される。呼気弁は、呼気時にはPEEP pumpにより作った圧で閉じているが、吸気時には、吸気ガス圧で呼気弁を閉じる。これらの切り替えは電磁弁Exhalation solenoidによって行われる。圧センサーはautozero solenoidにより自動的にゼロ点校正が行なわれている。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
フロートリガー方式で、1〜20 LPMの範囲で設定できる。患者が吸気を始めるとピストン内圧が低下するが、ベースライン(PEEP/CPAP)圧を維持するようにピストン運動が調節される。ピストンの動きはロータリーエンコーダーで計測されているが、計測量がフロー感度を超えるとトリガーが作動する。
2)Assist/Control
通常の強制換気と同じ。最高圧リミットにかかると吸気は即座に終了する。一回換気量は40〜2000 mlである。
3)SIMV
トリガーウィンドーは固定時間方式で、SIMVサイクル時間の60%である。呼吸が重ならないように、呼気ガス流量が、そのピーク流量の30%以下にならなければ、次の強制換気は始まらない。
4)PSV
吸気終了認識条件には、吸気流量が10LPM以下、もしくはピーク流量の25%以下のいづれか少ない方の値より低下した場合、PSV設定圧より3pH2O以上上昇した場合、3.5秒以上吸気が継続した場合(小児用回路では2.5秒)、のいづれかが使われている。ただし、PSVの開始より300ms以内は、この条件が100ms以上持続した場合となる。なお、最大吸気時間は5秒に限定される。ピストンの容量の制約のために2000 ml以上の連続した吸気は不可能である。
5)バッテリー駆動
内蔵バッテリーにより2.5時間、オプションの外部バッテリーを併用すれば約9時間駆動可能である。酸素の付加を必要としなければ、酸素配管は不要である。
6)無呼吸バックアップ
自発呼吸モードのみで有効で、20秒間無呼吸があれば作動する。自発呼吸モードを選択すると「無呼吸モード設定キー」が点灯し、呼吸回数、一回換気量、流量キーが点滅するので、無呼吸パラメーターを設定する。無呼吸バックアップはリセットキーを押すか、患者が2回連続してトリガーした場合解除される。
6.操作方法
操作方法(図III-4-14)
項目をボタンを押して選択した後、ノブを回して数値を設定し、入力キーを押して確定する。
7.モニター、アラーム機能
1)アラーム状態
アラーム、注意、正常作動の三段階で表現される。異常事態が解除されると注意のランプだけが点灯する。アラーム項目として、呼吸回数上限、一回換気量上限、一回換気量下限、低吸気圧、回路内圧上限、分時換気量下限がある。メッセージウィンドー内には最優先のアラーム内容が表示される。
パネル左側がモニター部分で、気道内圧、呼吸数、1回換気量、分時換気量、等をモニター表示する。
8.ディスプレー機能
気道圧はLEDのバーグラフで、その他は、数値で表示される。現時点では波形表示はできない。
9.患者回路構成、加湿器
(図III-4-15)
加湿器はカスケードI型が標準装備であるが、F&Pも選択できる。
10.メンテナンス
1)呼気弁
呼気弁は本体内に内蔵されており、日常的な使用での分解、洗浄、滅菌の必要はない。呼気弁の前に加温されたバクテリアフィルターがあり、これにより患者回路は汚染しないためである。そのため回路は単純に2本のチューブのみで構成できる。滅菌後の回路の組立ミスも起こり難い。
2)フィルター
呼気弁のバクテリアフィルターは、抵抗が4cmH2O/100LPM以下である事を時々確認する。ネブライザー使用後は、なおさらこの点に留意する。なお、バクテリアフィルターはオートクレイブのみ可能である。
11.定期点検
1)フィルター
3000〜5000時間で合計4箇のバクテリアフィルター(加温加湿器手前、呼気フローセンサー手前、ネブライザー回路、圧モニター回路)を交換する。
2)その他
その他、各種ファンフィルター、バクテリアフィルターの交換、洗浄はマニュアルの指示に行う。
12.欠点
1)2リッターを超える大きな吸気や、極端な頻呼吸には対応できない。
2)ピストン吸入時間が必要なために、吸引操作後などでは充分なPSVを提供できない可能性がある。
Bennett 7200ae
1.特徴(図III-4-21)
Bennett 7200は、吸気ガス流量を自在に調節できる能力を獲得した人工呼吸器の先鞭であった。これはマイクロプロセッサーと比例制御弁により達成された。今でこそ、こうした構成は標準的であるが、発売当初(1984)は極めて斬新であった。ハード面でも、7200から7200aになり呼気弁系が大幅に改良され、呼気弁の日常的な洗浄、滅菌が不要になった。7200aeでは、コンピューターの能力が増強された。パネル面も従来の"basic keyboard"と機能的に再配置された"enhanced keyboard"の2種類が用意された。弱点であったモニター機能も、7202モニター(オプション)で改良された。最近では専用のメタボリックモニター7250も用意されている。ソフト面ではPSV、Flow-by、DCI、呼吸メカニクスの測定に続いて、PCVやWaveform、Flow-by2.0、が新しく供給された。しかしながら、基本的な機構や操作性は共通で、PSV等のオプションの機能は、相変わらず「++キー」でメニューを呼び出さなければ使えない。
2.性能
1)利用できるモード
CMV(VCV,PCV)
SIMV(VCV) + PSV or Flow by
SIMV(PCV) + PSV or Flow by
CPAP(Flow by,PSV)
Apnea ventilation(VCV,PCV)
---------------------------------
+Flow by 2.0(=Flow trigger)
+PEEP
+SIGH
2)基本データー
システム作動間隔時間...20ms
最大吸気ガス流量
強制換気............120LPM
PSV.................180LPM
吸気ガススルーレート... L/s2
最大強制換気数......... 70BPM
最大SIMV回数........... 70BPM
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説
旧来の人工呼吸器では、電磁弁のon/offで吸気ガスを断続するだけであったが、Bennett 7200では、マイクロプロセッサー(7200,7200aはintel 8088、7200aeはintel 80188)により、"Proportional Solenoid Valve(P.S.V)"と名付けられた比例制御弁(サーボバルブ)をコントロールして吸気流量を直接制御する能力を持っている。そのため従来の人工呼吸器の概念を超えた「吸気ガスの波形を自在に制御できる」革命的な機械になった。
2)機械的機構の特徴
患者回路を可能な限りシンプルにしてある点や、また呼気弁や呼気側フロートランスデューサーを加温バクテリアーフィルターで保護して、日常のメンテナンスを不要にした点は、同社の人工呼吸器のトラブルに対する長年のデーターの集積とその対策へのノウハウである。
3)ガス流量計測(図III-4-22)
酸素ならび空気の吸気ガス流量制御用と、呼気のガス流量測定用の3箇所にホットフィルムアモネーターと呼ばれる熱線型のフロートランスデューサーが使用されている。これらには温度による誤差を補正するためにサーミスターが内蔵されている。Flow by,Flow by 2.0使用時には、これら3ヶのフロートランスデューサーで変化を捉えて、吸気の始まりや終わりを認識する。
4)吸気バルブ
(図III-4-23)
全開から全閉までを4096(=212)段階に流量を調整できるP.S.V(P.SOLとも略す)を用いて、吸気ガス流量を設定値と実測値の誤差情報に基づき20msごとに調整する。これにはデジタル的にフィードバックサーボコントロールが行われる。
5)呼気バルブ
呼気弁駆動系は、メカニカルレギュレーターによって作られる圧を電磁弁(ソレノイドバルブ)で切り替え、バルーン弁を駆動する方式である。PEEP補正機能はない。
4.ニューマティック回路(図III-4-24)
O2/Air配管より入力されたガス(35psi以上)は、ウォータートラップF1,F3、フィルターF2,F4、圧スイッチPS1,PS2、逆止弁CV1,CV2、を経由した後、それぞれO2/AirレギュレーターREG1,REG2で 10psiに減圧されて圧の安定化が行われる。 O2/Airは、それぞれに設けられている吸気側のフロートランスデューサーQ1/T1,Q2/T2で流量、温度が計測される。さらに O2/Airのそれぞれにサーボバルブ(P.S.V)PSOL1,PSOL2が設けられていて、吸気ガスの調整と酸素濃度の調整が一回で行われる。その後、吸気ガスは安全弁(SAFTY/CHECK VALVE)CV3を経由して患者に供給される。安全弁はシステム圧や制御系が異常時に患者回路を大気に解放する。(R1,R2,SOL5,REG4の働きによる)
酸素、圧縮空気それぞれに独立したサーボバルブ(P.S.V)を設けるのはピーク流量を制限するブレンダーを回避する為で、リザーバータンクなしで120LPM以上のピーク流量が可能になる。また、これは機械の小型化にも貢献する。ただし、サーボバルブを二つも制御する煩雑さがある。また、酸素濃度を調整する為に、余分なバルブのステップ数が必要になる。
呼気弁や安全弁を駆動するシステム圧は通常エアー側のガスで作られるが、エアー供給異常時には交差弁(CROSS-OVER SOLENOID)SOL3により酸素のガス圧が用いられる。
システム圧よりPEEP/CPAPソレノイドSOL7、PEEP/CPAPレギュレーターREG5、ジェットベンチュリーJVにより、PEEP/CPAP圧に応じた呼気バルーン駆動圧を生成する。この圧はPEEP/CPAP圧トランスデューサーP1により測定され制御回路に入力される。Bennett 7200では唯一PEEPの設定だけはつまみになっているが、これはPEEP/CPAPレギュレーターがメカニカル方式の部品でできている為である。
呼気ソレノイド(EXHALATION PILOT CONTROL SOLENOID)SOL4は、呼気弁バルーンを駆動する圧をPEEP/CPAP圧と呼気弁閉鎖圧とで切り替える。吸気時には吸気圧かシステム圧か、いづれかの高い方の圧を呼気バルーンに添加して呼気弁を閉じる。(EXHALATION PILOT PRESSURE NET WORK;R6,R7,CV7,CV6で作られる) 呼気時にはPEEP/CPAP圧で呼気バルーンを押さえることで、PEEP/CPAPを生じさせる。
患者からの呼気ガスは加温されたフィルターを通過した後、呼気側のフロートランスデューサーで、呼気ガス量を測定し、呼気弁(Exhalation valve)から排出される。呼気弁は本体内部に収納されており、日常のメンテナンスを必要としない。呼気弁の直前にかなり高温に加温されたフィルターが置かれており、これにより呼気弁の汚染は患者側には及ばないようになっている。加温フィルターは、細菌の増殖を防ぎ、呼気弁に水滴が凝集するのを防ぐ。また、これは呼気側のフロートランスデューサーの作動条件を一定化させる。加温フィルターで呼気弁の日常のメンテナンスを省力化する手法はInfrasonic社のAdultstarにも利用されている。
ネブラーザーソレノイドSOL1,SOL2はネブライザー駆動用のガスを作るが、これには流量調整機能がない。酸素濃度の設定が59%以下ではSOL1が、60%ではSOL1とSOL2が、61%以上ではSOL1が開く。ネブライザー使用時にはPSOL1,PSOL2の流量がその分補正されるので、酸素濃度に影響しない。また、換気量も変化しない。ただし、吸気ガス流量が少ない領域では、PSOL1,PSOL2で、ネブライザーの流量分を補正しきれない。
吸気側の圧は絶対圧トランスデューサーP2で、圧トリガー信号は差圧トランスデューサーDPでモニターされる。ゼロ点校正弁SOL6,SOL8は、自動校正時に、圧トランスデューサーP1,DPにゼロ圧を入力する。バックアップ機構(BUV)用のBUV圧スイッチPS4は、故障時のために設けてあり、気道内圧が回路内圧上限に達していないかをモニターするスイッチである。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
通常は、圧トリガー方式が使われている。 Flow byでは流量トリガー方式が使われる。Flow byには、ディマンド方式に比べて(a)流量トリガーの方がトリガーするまでの吸気仕事量が少ない、(b)トリガーするまでの時間的な遅れは吸気仕事量に影響しない、利点がある。
Flow by 2.0を作動させると、PSV,PCVを含めて全換気様式に対して流量トリガーを使用できる。この場合、圧トリガーより少ない吸気仕事量や早い反応速度になる可能性が示唆されている。
2)CMV
通常の強制換気と同じ。最高圧リミットにかかると吸気は即座に終了する。
3)SIMV
トリガーウィンドーは可変時間方式である。
4)PSV
吸気終了認識条件には、5LPM以下の吸気流量もしくはPSVレベルより+1.5cmH2O以上の圧上昇、のいづれかが使われている。ただし、PSVの開始より300ms以内は、この条件が100ms以上持続した場合となる。なお、最大吸気時間は5秒に限定される。
5)SIGH
任意の換気量、間隔、連続回数でSIGHができる。
6)Flow by
これは、簡単に言えば「定常流機能」である。呼気時には定常流を減らして呼気弁での抵抗を減少させる。しかし、これは自発呼吸用のディマンド機構で、PSVのような積極呼吸補助はしない。したがって最も良い適応はCPAPであろう。SIMVではPSVを併用するのが望ましい。
Flow byでのBase flow(基本状態での定常流量)は5〜20LPMの範囲で設定できる。トリガー検出後はPEEP/CPAP圧を維持するように吸気ガス流量が調節される。つまり患者の吸気流量がBase flowを超えても180LPMまでは供給される。患者の呼気流量が2LPMより大きくなると機械は呼気相の始まりと認識しBase flowを5LPMに減らす。呼気相の長さは最大で0.5秒もしくはそれまでの平均呼気時間の50%のいづれか短い方を限度として終了する。それ以後は設定されたBase flowに戻って次の吸気に備える。Flow by作動時には、流量トリガー方式が使われている。トリガーレベルは1〜10LPMの範囲で設定できる。
7)Flow by 2.0
これはFlow byの利点を補助換気モードに拡大するオプション機能である。これをオンにするとすべてのトリガーが流量トリガー方式になる。PSVやPCVとの併用も可能である。
8)PCV
PCVはPSV類似モードであり、吸気中に一定の圧が加えられるモードである。PSVではpatient cycleで吸気が終了するのに対して、PCVではtime cycleで終了する。パラメーターの設定方法は、吸気時間の絶対値による設定方法と%吸気時間による設定方法の2種類が可能である。後者はIRV時の設定に便利である。このオプションをオンにするとすべての強制換気(Volume ventilation)がPCVで行われる。CMV,SIMV,CPAPモードに併用した場合、それぞれPCV,SIMV(Press.control),マニュアル換気がPCVになる。
9)無呼吸バックアップ
"Apnea ventilation"と呼ばれる無呼吸バックアップが用意されている。無呼吸時間は初期値として20秒が自動設定されているが、任意の値に設定することもできる。換気条件も、初期値として「Vt 0.5l,RR 12BPM,O2 100%,ins.flow 45LPM」の値が入力されているが、換気条件も好みの値に設定できる。このバックアップは、トリガーが連続2回以上認識されて補助換気が行われると自動的に解除される。この無呼吸バックアップ機能を自動復帰型(autoresume)のMMVと称していた事もある。
10)BUV(Back up ventilator)
これはメインの制御機構であるMPU(Microprocessor)の"system error"、や"system break down"に備えてのバックアップ機構である。(注;一般的に用いられる無呼吸バックアップと混同しやすいので注意が必要である)。 このシステムは、MPUによるソフトウェアー処理によるメインの制御機構とは独立して存在する。また、ハードウェアー処理による制御回路で構成されているため、一定の設定に固定されている。非常時用の機構である。
11)RM (respiratory mechanics)
static and dynamic complianceの測定ならびに呼吸抵抗測定、患者の最大吸気努力圧測定、肺活量測定、患者の最大自発吸気流量測定が可能である。ただしオプションの機能なので操作が煩雑である。
12)DCI(Digital Communication Interface)
オプションのインターフェースを組み込めばRS 232Cによるデジタル出力が可能である。また気道内圧、吸気呼気流量、換気量の項目についてアナログ出力も可能である。
13)代謝モニタ7250
これはBennett7200ae専用のモニターで単独使用はできない。呼気ポート、吸気ポートよりガスをサンプリングし、酸素消費量、炭酸ガス産生量、呼吸商、エネルギー消費量、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝量を計測する。EtCO2の測定もできる。酸素センサーは常磁性方式で、二酸化炭素センサーは赤外線吸収方式である。
6.操作方法
操作方法(図III-4-25)
基本項目については、CMV,SIMV,CPAPモードの場合、パネル上のボタンやテンキーを使用してダイレクトに入力できる。
1)特殊機能
PSVやPCV、Flow-by、Flow by 2.0、RM、DCIはオプション機能扱いになるので、設定操作には、++キーを押して目的のオプションの機能を呼び出す必要がある。1項目づつ各種の条件設定をテンキーで入力する。例えば、PSV使用中に、途中でPSVレベルを変更したい場合でも、最初よりオプション機能を呼び出し、PSVの項を選択し、これを変更する手間が必要である。 他のオプションの機能も、すべてこのように希望項目を呼び出して操作する。
7.モニター、アラーム機能
1)アラーム状態
警告、注意、正常作動の三段階で表現される。異常時だけにアラームが点灯し警報音をならす。異常事態が解除されると注意のランプだけが点灯する。これらには12の監視項目があり、それぞれに対応したランプを点灯することで異常内容を表示する。なお、アラームが鳴り終わった後も、リセットするまで注意のランプが点灯したままになる。
2)アラーム項目
(1)回路内圧上限;10〜120cmH2Oで設定可能
(2)低1回換気量;0〜4 Lで設定可能
(3)酸素圧不足;35〜100psiの範囲外で警告
(4)空気圧不足;35〜100psiの範囲外で警告
(5)低吸気圧;3〜99cmH2Oで設定可能
(6)低分時換気量;0〜60LPMで設定可能(10呼吸計測)
(7)低PEEP/CPAP圧;0〜50cmH2Oで設定可能
(8)呼吸回数過多;0〜70BPMで設定可能
(9)ローバッテリー;内臓バッテリーの状態をモニター
(10)無呼吸;10〜60秒で設定可能
(11)吸気呼気比;I:E 比の逆転を警告する
(12)呼気バルブリーク;呼気弁よりのリークが1回換気量の10%、もしくは50cc以上認められる時
8.ディスプレー機能(図III-4-26)
ノーマル状態ではディスプレーウィンドーが小さいので、設定内容の数値しか表現できない。また、全内容を把握するにはボタンを何度も押して表示を切り替える必要がある。 ただし、オプションの7202ディスプレイを用いれば、この点は解決される。また、オプション#60の機能を使って流量や気道内圧のグラフも表示できる。
9.患者回路構成、加湿器(図III-4-27)
加湿器はカスケードI型が標準装備であるが、F&Pも選択できる。
10.メンテナンス
1)呼気弁
呼気弁は本体内に内蔵されており、日常的な使用での分解、洗浄、滅菌の必要はない。呼気弁の前に加温されたバクテリアフィルターがあり、これにより患者回路は汚染しないためである。そのため回路は単純に2本のチューブのみで構成できる。滅菌後の回路の組立ミスも起こり難い。
2)フィルター
呼気弁のバクテリアフィルターは、抵抗が4cmH2O/100LPM以下である事を時々確認する。ネブライザー使用後は、なおさらこの点に留意する。なお、バクテリアフィルターはオートクレイブのみ可能である。
11.定期点検
1)フィルター
3000〜5000時間で合計4箇のバクテリアフィルター(加温加湿器手前、呼気フローセンサー手前、ネブライザー回路、圧モニター回路)を交換する。
2)その他
その他、各種ファンフィルター、バクテリアフィルターの交換、洗浄はマニュアルの指示に行う。
12.欠点
1)呼気弁駆動系は、かつてのMA-1と同程度の機構でPEEP/CPAP圧補正機能はない。また、機構上、パテントの問題がなくてもBIPAPや圧リリーフ換気は不可能である。
2)オプション機能の設定方法が煩雑である。特に日常的に多用するPSVの設定が煩わしい。
図III-4-1 840外観写真
図III-4-2 840ニューマティック回路
図III-4-3 840SIMVにおける無呼吸換気
図III-4-4 840PSV吸気終了圧条件
図III-4-5 840操作画面
図III-4-6 840始動画面
図III-4-7 840設定画面
図III-4-8 840ディスプレー画面
図III-4-9 840患者回路
図III-4-11 740外観写真
図III-4-12 740フリクションレスピストン
図III-4-13 740ニューマティック回路
図III-4-14 740操作パネル
図III-4-15 740患者回路
図III-4-21 7200ae外観写真
図III-4-22 7200aeフローセンサー
図III-4-23 7200ae吸気バルブ
図III-4-24 7200aeニューマティック回路
図III-4-25 7200ae操作パネル
図III-4-26 7200aeディスプレー
図III-4-27 7200ae患者回路